研究内容

口腔癌に対する新規免疫療法に関する基礎研究
がん免疫療法は、手術、化学療法、放射線療法に次ぐ第4の治療法として、近年その役割が改めて注目されております。2018年のノーベル賞受賞で話題となったがん免疫治療薬であるニボルマブは、がんにおける免疫逃避機構の一つである免疫チェックポイント分子を標的とした治療薬であり、本邦では2017年より再発または遠隔転移を有する口腔癌の治療において適応となりました。しかし、その治療薬による効果は、投与を受けた患者さんのうち30%程度とされ、多くの場合は効果が示されないのも事実です。そこで、当教室では、免疫チェックポイント阻害薬に対する治療抵抗性の機序を解明し、その効果を最大限に引き出す新規治療法の開発を目的として、担癌宿主で増加する免疫抑制性細胞と、担癌宿主における免疫学的老化現象に焦点をあてた研究を行っております。
CT画像を用いた抜歯および歯科インプラント治療のための解剖学的研究
抜歯や歯科インプラント治療の術前評価に際して、CTによる3次元的な評価が行われています。我々は、CT画像による下顎第三大臼歯と下歯槽管の形態評価によるオトガイ神経障害の予測因子として断面形態がダンベル型の症例が、オトガイ神経障害ハイリスク症例であることを明らかにしました(2016)。現在、そのハイリスク症例の検証を進め、さらなる予測因子を同定中です。また、歯科インプラント治療の5年生存率は90%以上と言われるなか、長期症例では、インプラント周囲炎が散見されます。特に、顎骨欠損症例に対して再建術を施行し広範囲顎骨支持型補綴を行なった症例では、その管理に難渋することが多いです。現在、最適な治療計画を立案するため有限要素解析法を用いて、力学的観点から症例の経過をフィードバックしています。
高悪性度口腔癌に対する標的化治療に関する研究
口腔癌は、近年の治療法の改善により全体としての治療成績は向上しているが、各種治療法に抵抗性を示す高悪性度癌の存在は、いまだに課題の多いところです。われわれの研究室では、これら高悪性度口腔癌に対する効果的な治療法の開発を目指し、これまでにいくつかの研究成果を報告しております。当教室の平識博士らは、細胞のプログラム死の実行因子であるかスパーゼ3分子が、がん細胞においては、細胞死を誘導せず、低活性化状態で口腔癌細胞の増殖を促進する働きを有することを解明しました(2015)。また、櫻井博士らは、脂肪酸受容体であるCD36分子が、口腔癌細胞の増殖や浸潤を促進していることを解明しました(2018)。
アスタキサンチンによる口腔粘膜炎予防に関する基礎研究
がん治療において、化学療法や放射線療法による有害事象のひとつである口腔粘膜炎は深刻な問題です。がん治療中の患者さんの口腔粘膜炎に対しては、口腔衛生管理が重要であり、歯科医師とともに、その大きな役割を担っているのが歯科衛生士です。当教室では、歯科衛生士らを含めた研究チームにより、抗酸化物質であるアスタキサンチンの組織修復効果に着目した、がん化学療法による口腔粘膜炎予防に関する基礎研究を行っております。
臨床研究
R2024080 研究責任者:山田慎一教授
口腔扁平上皮癌における導入化学療法としてのPCE療法の有効性に関する検討
R2024071 研究責任者:高塚団貴特別助教
口腔癌患者における非外科療法に伴う経済毒性の検討
R2023226 研究責任者:今上修一講師
顎矯正手術適応患者の口腔機能の変化に関する研究
R2023123 研究責任者:山田慎一教授
口腔癌進展、再発、および遠隔転移例に対する治療法およびその効果に関する後ろ向き観察研究
R2023087 研究責任者:山田 慎一教授
高齢口腔癌患者における高齢者機能評価が治療方針、自立期間へ与える影響に関する多機関共同後ろ向き 観察研究
R2023078 研究責任者:山田 慎一教授
後期高齢口腔癌患者の治療方針決定に影響を与える因子に関する多機関共同後ろ向き観察研究
R2023104 研究責任者:山田 慎一教授
下顎歯肉癌における下顎管浸潤・骨髄浸潤を基準としたT分類の有用性の検討
R2023092 研究責任者:山田 慎一教授
口腔扁平上皮癌T4b症例の手術治療成績とその適応に関する後ろ向き研究
R2024041 研究責任者:山田 慎一教授
口腔癌におけるPAK4およびmTORの発現と予後との関連を検討する後ろ向き観察研究
R2023047 研究責任者:山田 慎一教授
UICC第7・8版の口腔癌TNM分類の比較と下顎管浸潤の口腔癌T分類に関する後ろ向き観察研究
R2023016 研究責任者:今上 修一講師
免疫チェックポイント阻害薬を適用した再発・遠隔転移口腔癌の臨床的検討
R2022185 研究責任者:山田 慎一教授
顎口腔領域への転移性腫瘍の多施設共同後ろ向き観察研究
R2021154 研究責任者:今上 修一講師
口腔癌におけるAIを用いた化学療法効果予測モデルの開発