診療内容

口腔疾患の高度専門医療を担当します。口唇、頬粘膜、硬口蓋、軟口蓋、舌前2/3、口腔底、顎骨、唾液腺(耳下腺を除く)に生じる疾患を対象とし、疾患の根本治療から口腔の機能回復、リハビリテーションまでを行います。具体的には、口腔腫瘍、口腔先天異常(口唇口蓋裂など)、顎変形症(受け口など)、顎顔面外傷、顎関節疾患、炎症、歯科インプラントによる咬合再建などの口腔外科疾患ならびに基礎疾患を有す患者さんの歯科治療です。

口腔癌

口腔にはたくさんの機能があります。咀嚼(ものをかみ砕く)や味覚・嚥下(飲み込む)・言語・唾液による消化などです。この機能は、歯やそれを支える骨・舌・口蓋・頬などが複雑にかかわりあって成り立っています。口腔の腫瘍はこれらの部位に発生するため、良性悪性を問わず、腫瘍そのものが大きくなることにより、これらの機能に障害が生じます。悪性腫瘍の場合では、患者様の生命予後に大きくかかわることもあり、仕方なく必要十分な範囲の切除を行うこともありますが、当科では、腫瘍の根治性のみならず、機能温存や形態の回復、すなわち患者様のQOL(Quality of Life)が可能な限り保たれるように、治療計画を立てています。病変の部位、腫瘍の進行度、臨床的悪性度(見た目や増殖の早さ)・病理組織学的悪性度(組織レベルでの性格)、全身状態および患者様と御家族の希望などにあわせ、治療法を選択します。

口唇口蓋裂

口唇裂口蓋裂は日本人でおよそ500人から700人に1人の割合で発生し、体表にある先天性疾患の中ではもっとも多いものの一つです。世界の中でも日本人の発生率は高く、多数の遺伝的因子が関与していると考えられていますが、詳細は明らかではありません。現在では妊娠中に診断されることもあり、当科では出生前からの受診も受け入れており、安心して出産できるよう支援を行っています。また出生後は、術前鼻矯正をはじめ、口唇形成術や口蓋形成術といった外科治療、小児科や耳鼻科との連携、言語聴覚士による言語療法など、一貫治療を行う体制を整えています。

顎変形症

上顎あるいは下顎が前に出ていたり、逆に顎が小さくて上下の歯の噛み合わせが大きくずれている場合、あるいは顔が非対称で歪んでいるような場合は「顎変形症」と総称される病気である可能性があります。受け口などによる審美的な障害や、うまく噛めない、あるいは言葉がわかりにくいなどの機能的障害に苦しむ患者さんも少なくありません。当科では、個々の患者さんに適切な治療を行うため、矯正専門医とともに十分な検討を行い、治療の計画を立てています。最終的には、決して見かけだけの改善に終わることなく、顎顔面の持つ重要な機能の調和を目指して、最良の結果が得られるよう努めています。

口腔インプラント

口腔インプラント(以下:インプラント)治療とは、虫歯や歯周病、外傷などで歯を失った部分の骨に人工歯根を埋め込み、見た目や咬む機能を回復させる治療法です。インプラント治療は、個々の患者さんの口腔内の状態により、その患者さんにあった、治療を行う必要があります。当科では、CT検査などにより術前に十分に審査した上で、複数の歯科医師によるカンファレンスにより、治療方針を決定しています。また、患者さんの希望・埋入部位の状態により、それぞれのタイプのインプラントを使い分けています。

有病者の歯科治療

脳血管疾患や心疾患、腎機能障害や肝機能障害を有する患者さんや、悪性腫瘍やその他の重度な全身疾患で治療中の患者さんの歯科治療を担当します。全身疾患を有する患者さんは、様々な治療薬を服用されていることが多く、抜歯後に血が止まりにくかったり、菌に感染しやすかったり、また歯科治療を行うにあたっても様々な支障を抱えております。そこで、一般のかかりつけ歯科医院での歯科治療や抜歯が困難な全身疾患を有する患者さんに対して、当院では、全身疾患の治療にあたる主治医と連携のもと、歯科治療や抜歯を積極的に行っております。

摂食嚥下リハビリテーション

超高齢化社会において、いつまでも美味しく食べられることは、生活の質(QOL)の観点からも重要です。しかし、高齢者や有病者の多くは、様々な理由で摂食嚥下障害を伴っております。摂食嚥下障害は、肺炎・窒息・低栄養・脱水など生命の危険に直結することもあります。摂食嚥下リハビリテーションでは、患者さんが安全かつ楽しく生活できるよう、栄養摂取の方法を確立することを目指します。患者さんに合わせた食事や栄養摂取のスタイルを確立することが、嚥下リハビリテーションの最大の目標です。当科では、言語聴覚士等や歯科衛生士、原疾患の主治医や看護師など多職種で連携を図りながら総合的なサポートを提案致しますよう心がけております。